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Windy Fantastic Talk .4

「落ち着いてきたかしら?」
 手元に出されたのは、特になんの変哲もない紅茶。鳴れた手つきで猫の姿を模した少女が急須を傾け、自分に差し出された湯のみに注いだ紅茶だ。

「ええ、紅茶までいただいて、助かります」
「それで…」
 改まった表情で幽斗を見る少女、彼女の名は”八雲 紫”、今までみた少女達とは一際違う風格は、名前にもある紫色のドレスや全てを見据えたような、澄んだ眼差しか。

「聞きたいことは、山ほどあるんじゃない?」
 こちらから聞きに入るまでもなく、紫はその状況に不適な笑みを浮かべて問う。幽斗は表情を変えることなく、自分の為の整理を行い始める。

「まず、ここはどこなんです?」
「ざっくりと言えば、貴方の想像を遥かに超えた異世界、この世界では全てが許容され、何もかもを受け入れる…我々はここを幻想郷と呼んでいるわ」
 ”幻想郷”この一言だけで、ファンタジーの香りを撒き散らし始めた。

「その、幻想郷は…私の知っている世界とは全く違う、別世界と考えていいのでしょうか」
 幽斗は続けて質問をする。

「比較的に、命は容易い扱いではあって、間違いはないわね」
「死ぬことに抵抗がない…?」
「死ぬと思ってないの、特に、力のある者は」
 力。とはどうやら、自分が遭遇した火の玉や、少女等が生まれ持ってから宿る潜在的パワーらしい。彼女自身にも力があり、いかなる空間においても、この幻想郷を監視する能力を持っている。

 恐らく、最強の能力で間違いはない。

「俺にも、能力はあるんでしょうか」
「あら、気になるの?」
 そこまで聞くと、気になってしまうのは人の性であろうか。

「でも残念ながら、私からは何とも答えられないわ」
 能力はその人の生まれ、生活、役職、体質や思想、外部的パワーなどが影響を与えるため、誰しもが光の刃物を飛ばせるとは限らないし、空間に穴を開けることもないようだ。

「貴方がこの世界から出る、それだけなら能力は必要ないわ」
「じゃあ俺は、どうやってこの世界から抜け出せるんでしょうか」
 紫はゆっくりと立ち上がると、桐箪笥の中から分厚い、新聞を取り出して広げて見せた。

「紅白の巫女に会いなさい」
 その新聞に載っているのは、紛れもなく巫女の姿であった。黒く整った髪、頭頂部の大きなリボン、巫女の装束着はしっかりと彼女が巫女であることを表していた。

 それ以前に。

「この世界は、小さな女の子しかいないんでしょうか…」
「貴方と年相応の女性もきちんといるわよ?」
「あぁ、いや、そうじゃなくって」
 ふふっとイタズラに笑う紫、しっかり辻褄を合わせれば、少女ばかりしかいないと言うのは、ちゃんちゃら可笑しな話か。

「なぜ火の玉や、墓地にいた女の子は俺を襲ったんでしょうか」
「あれらの役目は、侵入者を拒むために配置された従者」
「なるほど」
 それに属さないタイプもいることが判った。イタズラ好きの妖精、好戦的な妖怪、酔狂な考えの持ち主、争いの火種は絶えずある。

「でもこの世界は絶望しない、巫女の存在がある限り」
 この一言で、この世界の巫女がどれほど重要で、大きな役割をしているかが伺えたが、紫は溜め息を一つ吐くと。

「彼女は生粋の、きまぐれ屋さんだけどね」


 まずはマヨヒガを目指すことを勧められ、生い茂る木々の間にできた、京明かりの美しい石道を進む幽斗。転々と進むものを見つめるような灯篭が、時代を感じさせる景色だ。

 八雲 紫、彼女は能力の制限を告げ、自分を見送る手筈を設けてくれた。本来なら屋敷の生活を管理する従者がいたようだが、たまたまに留守だったようで、丸っこい握り飯を三つ、持たせてくれた。

 小さな猫姿の少女、”橙(ちぇん)”が作ったであろう持たせ物だ、彼女の口元にはご飯粒がついていたからだ。

「幻想郷、ねぇ…」
 まだ全てを受け入れたワケではないが、此処に来る前にそんな情報も、アトラクションも、施設も聞いたことが皆無。日本語も通じるし、タチの悪いドッキリとは到底思えない。

 もし、あの光る刃物に当たっていたら。幽斗はボーっと、そんなことを考えていたが、それよりも今後の身の振り方のほうが重要かと、思ったそのときだ。

 肩から手の甲にかけてザワつく違和感、彼は咄嗟に後ろを振り向いた。

「あれ…」
 さっきまで見えていた八雲の屋敷は霞がかかってしまい、完全に見えなくなってしまったのだ。気づいて正面だったほうを見ると、その景色は段々と姿を変えていくではないか。

 これだ。この通常では考えられない、非常識で自分の理解を済し崩してくる怪奇現象がある故に、幻想郷と言う存在も認知せざるを得ない。

 幽斗は一歩ずつ、進んでいたであろう方向へと、歩みを進めていく。願わくば、もう襲われることはないと思い。

 そうして変化する情景は、次第に民家のようなものを映し、徐々に鮮明に、そしてそれが目指すべきであった場所、マヨヒガであることを示すのであった。

Windy Fantastic Talk .3

 自分はなぜ逃げたのか。自分の体格に反して、手よりも小さな火の玉が複数、羽虫のように集まって飛んできている。火の玉は怪しく青く光りながら、輝く刃物をこちらに向けて飛ばしてくる。

 感じる殺意、それは一つ一つの大きさと釣り合わないほどに大きく、背中を濡らす冷や汗が、全身を凍らせてくる。

「あああああ!!」
 確実に向かってくる刃物は、自分の頭上を通り過ぎて石の扉に弾かれる。そして自分の体は。

『―――いらっしゃい』
「!!?」
 亀裂もなく、細く丸い穴がぽっかりと、自分の足元に開いていたのだ。真っ暗の世界が足元に。

「うぅ…!」
 いや、暗黒の世界には多数の、目だ。自分を見つめる異常な量の目が現れたのだ。混沌とした世界とは裏腹に、聞こえた少女の声に導かれて、幽斗は再び自由落下し始めた。


「―――あぁぁ」
 頭が痛い。唐突に入る光で視界はぼやけていた。綺麗な畳の上に羽毛布団が敷かれており、自分は今、そこに仰向けで倒れていた。夢、とは思いたがったが、この光景を自分は知らない。

 綺麗な和室、洒落た襖に年代を感じる桐箪笥。まるで古い時代にタイムスリップしてしまった混乱が、カルチャーショックのような気持ち悪さを与えてくる。

「家…なのか」
 さっきの光景、信じがたい光景ではあったが、鮮明に覚えている。そこは墓地と石の大きな扉、そこに比べれば心はとても落ち着ける。

 灰色の木々が暖かい陽を受けてすくすくと育ち、春には綺麗な桜が咲くであろう木々は、綺麗に規則正しく庭を彩っていた。庭に散る葉は少なく、白い石が美しい。

「あっ」
 声が聞こえた。今日はどうにも、小さな女の子の声をよく聞く。

 だがその声が聞こえた方向がどうもおかしい。幽斗はまさかと、左右を一周みてから、頭上に顔を向ける。

「お、おはようございます」
「えっ、あぁ、おはよう…ございます」
 濃い茶髪の髪が、重力に逆らわずに垂れ下がっており、人間の耳はなく、少し高いところに動物特有の、特に猫のような耳が上を向いていた。

「仮装パーティー中…?」
 頭の耳をジェスチャーで伝えながら聞くが、橙色の瞳の少女は首を横に振る。どうこの状況を説明したらいいか、迷ってるようにも見える。すると彼女は、幽斗の前に軽やかに降りて見せた。

 そこそこ高い位置から降りていたが、地を踏んだ音も非常に軽かった。

 背はとても小さい、幽斗の足からお腹ほどしか大きさがないため、見た目はまるで小学生。紅色の鮮やかなドレス、スカートの先は白いラインと、レースのかかった小洒落た服装だ。

 素晴らしい仮装だと思いたいが、尻尾は一体どこから伸びて、どうやって自然に動いているのかは説明がつかなかった。

「困ったら人に聞くって言われてるんだ」
 そう言うと、廊下を足早に去っていった。

 参ったな。自分がここを理解する前に、次々と難題が発生する状況が続いている。こういうときは甘いものを食べて、とりあえず起こったことを白い紙にぶつけるに限る。

 財布も鍵も、仕事の資料が入った鞄も、靴すらない。スーツの上着は綺麗に畳まれて布団の隣に置いてあり、土ぼこり一つ被ってなかった。

 溜め息ひとつ、ズボンに手を入れると、右手側に重厚なアイテムが、肌身離さず持ち続けていたものが手元に残っていた。

(携帯…)
 フォルムは非常に近未来的で、正面の小さな画面には現在の時間、日付、曜日、バッテリーの状態と電波の強さが、アナログ表記で表示されるハズの画面も、ただのガラスと電磁盤の飾りになっている。現代で見るガラケーと比べれば、質量も、性能も、重量もケタ違いの、一線を画した旧世代のアイテムだ。

 折りたたんであるソレを、開こうと手をかけた瞬間だ。

「お目覚め、ね」
 ハッと少女が走っていった方へと目をやると、そこには扇状に広がる長い金髪を靡かせた、後に続く二人の少女に比べても、なかなかに派手なドレスを身に纏った、これまた少女がこちらに歩み寄ってくる。

 ベースのカラーは紫か。派手に装飾されたレースが、彼女をまるでお人形のように仕立て上げているその容姿からは、威厳、のようなものも感じざるを得ない。そろそろ首が疲れる程度に、幽斗は彼女達を見下すしかなかった。

「迷える外界の人、黒澤幽斗」
 きっと、彼女がこの状況の説明をしてくれるんだ。感覚というか、直感が、幽斗の中で確たるものとなっていた。

 この、紫色のドレスの少女が、初対面の自分に―――。

Appendix

ーたんうかすせくあ


超どうでもいいヤツについて

sun

Author:sun
※ちなみに左が私です。
(絵:ちり紙さん 様)

性別:太陽
属性:情報専門学生
相棒:G'zOne t-X
好物:午後の紅茶MT
流行:艦隊これくしょん

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